ブルガダ症候群とは

※本記事は2018年1月15日に公開した記事ですが、読み返したらちょっと変なところとかあったので、もう少しわかりやすく読みやすく内容を修正して2020年12月7日にリライトして再度公開しました。

ブルガダ症候群について

あまり聞き慣れない名前だと思いますが、ブルガダ症候群とは、”心室細動”という致命的な不整脈を稀に引き起こしてしまう心疾患です。特にアジア人の男性に多くみられ、働き盛りの30代〜50代に発症するケースが多いようです。実は僕もそのうちの一人で、36歳の時にブルガダ症候群と診断されました。

“ブルガダ”とは発見された方の名前から由来しているんですね。

ブルガダ症候群(ブルガダしょうこうぐん、英: Brugada syndrome)は、1992年にスペイン人医師ペドロ・ブルガダとその兄弟が報告した心疾患で、疾病名は最初の報告者名に由来する。ブルガーダ症候群とも呼ばれる。

引用元:ウィキペディア

心室細動が起きると心臓が痙攣した様な状態になります。ほとんどは一過性の心室細動だけで、その後自然回復して元の脈拍に戻るという一時的なパターンが多いらしいですが、もしも脈拍が戻らない場合、体全体に血液を循環させているポンプ機能が失われるため、意識を失ったり、痙攣を起こしたり、最悪の場合そのまま心肺停止状態となって死んでしまいます。

説明する医師

心電図にブルガダ型の特殊な波形が見られるとブルガダ症候群の疑いありです。ですが、心室細動を引き起こすケースはごく稀で、まったく発作を引き起こすことなく一生を終えていく人が大半のようです。ブルガダ症候群には心室細動を引き起こしてしまう可能性が高い”有症候性”と、心電図ではブルガダ型の波形を示すものの、心室細動を引き起こす確率が極めて低い”無症候性”という二つのパターンがあります。残念ながら僕は前者の有症候性の方でした。

昔はポックリ病とか言われてた

まだブルガダ症候群という名前が知られる前は、ポックリ病とか言われてたみたいです。昨日まで元気だった人が「朝起きてこないので呼びに行ったらすでに亡くなっていた」というやつです。原因は謎とされていましたが、おそらくその多くがブルガダ症候群だったんじゃないでしょうか。

実はブルガダ症候群による心室細動は安静時に起きる事が多く、夜寝静まった頃が一番危険なんです。みんなが寝ている間に起きるので誰も気づかないというわけです。現に僕もポックリ逝きかけました。今こうやって生きている事が本当に奇跡です。ここからは僕が初めて発作を起こした当時の事を少しお話したいと思います。

青天の霹靂ってこれで合ってます?

ある日の朝、体を揺り動かされ目が覚めると、うちの奥さんと子供達が心配そうな顔をして、「パパ大丈夫?すごい声で唸ってたけど……。」と神妙な面持ちで僕の顔を覗きこんでいました。その時はまだ頭がぼんやりしていて、何となく体に力が入らない感じがしましたが、連日の残業続きで疲れていた事もあって「大丈夫大丈夫、もうちょっと寝とくわ〜」と言って、もうひと眠りしようとしました。

ところがうちの奥さんは僕の表情を見て、これはあかん!と直感的に思ったらしく「とりあえず救急車呼ぶわ!」と言って直ぐに119番してくれました。それから僕もだんだんと意識がハッキリしてきて、体が今まで感じた事が無いくらい異常に怠く、そして自分で立つことさえままならない状態なんだという事に気がつきました。しかも下半身に何か違和感が……。なんと僕は失禁してしまっていました。

心臓ブルブル

先ほども言いましたが、心室細動が起きやすいのは割と安静にしている時、夕食後の就寝時が最も多いらしいです。僕の場合も寝ている時に心室細動が起きたんだと思いますが、運が良かったのか僕の生命力がハンパなかったのか、なんとか自然回復してこの時は悶えながらも自力で心臓を再起動させたみたいです笑

まさに必死のパッチです!

僕自身は全く記憶が無いのですが、とても大きな声で唸り声を上げていた様で、家族が言うには悪霊にでも呪われたのかと思ったらしいです笑笑 でもそれぐらい禍々しい声だったみたいです。とにかく心臓を動かす事に全エネルギーを使い果たしてしまったのか、体に全然力が入りませんでした。

しばらくして救急隊員の方達が来て下さり、奥さんが状況を説明していました。そして救急車で運ばれ無事病院に着いたと思ったら、すぐにまた心室細動が起き、僕は再び意識を失ってしまいました。

心臓マッサージはすんごい痛い!

気がつくと心臓マッサージをされていて、一瞬何が起きてるのか訳がわかりませんでした。救急スタッフの方が僕の目が覚めた事に気がつくと「大丈夫ですか?お名前はわかりますか?」などと優しく僕に声をかけながらも、レントゲンやカテーテル検査、心電図など、今の僕が一体どんな状態なのかを特定するため、それはもうあらゆる事をテキパキしてくれていました。

僕の意識もだんだんとハッキリしてきて、自分の心臓の鼓動を妙にリアルに感じました。そしてまたその鼓動が止まりそうな気がして、初めて””というものをとても身近に感じ不安で一杯になりました。

しばらくすると奥さんと子供達、そして奥さんのお父さんとお母さんも知らせを聞いて駆けつけてくれて、「大丈夫か?」と顔を覗きに来てくれました。この時、家族の顔を見て少しホッとしたのを覚えてます。しかしホッとしたのも束の間、みんなが処置室の外へ出た直後、再び心室細動が起きました。いよいよ僕を殺しにかかってきてるわけです。気が付くとまた心臓マッサージをされていました。

心臓マッサージ

なかなか経験するものじゃないですが、心臓マッサージはとんでもなく痛いです。胸部を力一杯押されるので骨こそ折れませんでしたが、しばらく声も出しにくかったです。稀に骨折する場合もあるらしいと聞いた事がありましたが、なるほど納得です。そりゃ懸命に僕の心臓を動かそうとしてくれてたんですもんね。

本当に救急スタッフの皆さんには言葉では言い表わせないぐらい感謝の気持ちで一杯ですが、口から心臓が飛び出すんじゃないかと思うぐらい本当にものすごく痛かったです笑

連続して意識を失い、そしてまた心臓マッサージで目が覚めるというのを繰り返していたので、さすがにいよいよ死ぬのかと思いました。でもそれとは裏腹に、あまりにも目まぐるしく色々な事が起きている現実に気持ちの方が追いつかず、死にそうなのにも関わらず三途の川やお花畑は見えへんな~なんて他人事のように暢気な事も考えたりしてました笑

結局、病院に着いてから連続して二回も心室細動が起きました。救急スタッフの方々の懸命な処置のおかげで僕は何とか奇跡的に命を取り留める事ができました。

そしてあの日、ちょうど処置にあたってくれた医師の方がたまたま循環器内科の先生だったのも幸運でした。いち早く僕がブルガダ症候群だということを見抜き、適切な処置を行ってくれたおかげで僕の命は助かったんだと思います。本当に感謝してもしきれません。

そしてそして、うちの奥さんの直感が本当に素晴らしかった。あの時僕の異変に気付かず、すぐに救急車を呼んでくれていなかったら……今頃僕はこの世に居なかったかもしれません。もう奥さんには一生頭が上がりません笑笑

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


次の記事

ICDとの付き合い方